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人を信じる

 投稿者:こまいぬメール  投稿日:2008年 7月12日(土)00時39分29秒
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  >荻野様

いつも(私にとっては)興味深い質問をありがとうございます。
「単純な」とおっしゃいますが、非常に刺激になります。

>  鰯の頭を信じても、山頂にたどりつける(つまり、悟りですか?)のなら、
> 神仏以外のものを信じてもたどりつけますか。例えば『走れメロス』みたいに
> 人を信じる、といったことです。この場合は「信仰」にはなりませんけど。そ
> れともやはり対象が「神仏」である必要があるのでしょうか。

まず、「神仏」というのは、人間の力や知識を超えた何ものか、いわゆる
「サムシンググレート」であって、ダルマ(法)あるいは大宇宙の摂理と
いってもよいということを踏まえた上で、考えてみたいと思います。

そうすると、この世に存在するあらゆるものは「サムシンググレート」の
顕現ということになりますから、どこからでもたどり着くことは可能だと
考えられます。

そういう意味では、人を信じるというところからでも可能であることは
当然です。ただし、そこまで人を信じられるかということが大問題ですが。

私は、単に一般的な「その人を信じる」というレベルでは、本当に人を
信じることはできない、と私は考えます。というより「神仏」すなわち
「サムシンググレート」を信じずして、本当に人を信じることができる
とすれば、私にとっては驚くべきことです。

人間というのは、弱いばかりでなく、不完全な存在です。裏切るつもりは
なくとも裏切らざるを得ないこともあれば、結果として裏切ったことになる
ことだって少なくありません。

『走れメロス』は物語ですから、メロスは無事に間に合い、お互いに一発
殴り合って(メロスは裏切ろうとしたことを、セリヌンティウスは不信を
起こしたことを告白して)めでたく大団円を迎えるわけですが、最近、
私はこれに疑問を抱いています。

この物語では、セリヌンティウスはメロスが必ず三日後に帰ってきて、
自分は死刑にならずに済むということを信じて身代わりを引き受けることに
なっているわけですが、そんな甘い覚悟で引き受けられるものでしょうか。
まあ、世の中にはそういう甘い覚悟で引き受けて、裏切られたと悔やむ人が
たくさんいるわけですから、セリヌンティウスだって、そうだったかも
しれませんが…(疑いの心が起こったぐらいですから)。

たとえメロスが絶対に約束を守りきるつもりで、一度たりとも心変わりを
しなかったとしても、実際には何が起こるかわかりません。メロスは
山賊に殺され、セリヌンティウスはディオニス王に殺されるという結果に
なる可能性だって少なからずあるわけです。

もし、そうなったとき、セリヌンティウスがどう考えるかが問題です。

何しろ、セリヌンティウスにはまったく事情がわからないわけですから、
メロスが間に合わなかったということだけが事実として存在することに
なります。それに対してメロスが裏切ったと考えるか(メロスが帰って
来るということが絶対的な基準であれば、事実として明らかにメロスは
裏切ったことになります)、それでもメロスを信じて逍遙と死刑に処
されるか。

ここにおいて、同じ言葉であっても、質はまったく違う「人を信じる」
ということがあることが明確になります。

前者のように「メロスという人間が期待通りの結果をもたらすこと」を
信じるという意味で「人を信じる」のであれば、それ以上のレベルに
行くことはないでしょう。しかし、後者のように結果の如何を問わず、
自分が死刑になっても信じるというのであれば、それは宗教的な、
いわば悟りの境地と同様だと言いうると思います。というか、ある程度
そういう境地でなければ、それはできないでしょう。

ですから、まあ、私としては、セリヌンティウスに、引き受ける時点で
身代わりに死ぬ覚悟ぐらいしておけと言いたいところです。というか、
その覚悟もないのなら、引き受けるなと言いたい。
少なくとも、私がある人を信じるというのであれば、そうします。
そうして後悔しない相手でなければ「信じる」とは言いません(あくまで、
私は、ですが)。

親鸞上人は、法然上人に欺かれて、念仏をして地獄に堕ちたとしても
自分は後悔しない、とおっしゃっています。つまり念仏や阿弥陀様を
信じる以前に法然上人を信じているということですが、そこまで信じる
ことのできる人がどれだけいるか、そこまで信じることができるならば、
人を信じるところからでも「同じ高嶺」に至れるだろうと考えます。
 
 
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